なおちです。のんちなおち日和の新コンテンツ「なおちの本棚」始動です!
大学時代は年間100冊程度ジャンル問わず読んでいたなおち。
ペースは落ちましたが今でも読書好きなので、読んだ本をちからのかぎり紹介していきます。
記念すべき第1回は、「伊坂幸太郎」の「フーガはユーガ」です。
- 概要
- 書評
1. 概要
双子の兄弟が織りなす「戦いと再生」の物語
常磐優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語りだす。双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの、誕生日にだけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと―。ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、邪悪な存在に立ち向かおうとするが・・・・・・。
裏表紙あらすじ
著者:伊坂幸太郎
出版社:実業之日本社文庫
ジャンル:ミステリー
文量:340p
2. 書評
※作品の設定や構成など、一部ネタバレを含みます。
読みやすさ:★★★★☆
エモさ :★★★★☆
後味 :★★★☆☆
- 複雑すぎないミステリー好きの人
- 親子で感想を語り合いたい人
- ただのハッピーエンドよりは現実的な結末を読みたい人
厳しい家庭環境に生まれ育った双子の兄弟が
特殊能力を駆使しながら協力して困難を乗り越えていくタイプの物語。
この双子、「毎年誕生日だけ、2時間置きに2人の場所が入れ替わる」という特殊能力が備わっている。
この設定がまず惹きつけられるポイント。
特殊な設定ではあるが、圧倒的な能力で無敵。みたいななろう系にありがちな派手なものではなく、
自分たちで制御できず、分かりやすい活躍シーンも無い地味な設定。
普通の双子のこどもが、どんな能力か・使いみちはないかと実験、検証していく姿に愛おしさを感じる。
本作は主人公の語りに合わせて、過去と現在、2つの軸を行来しながら展開される。
時間軸が飛び移る話は、進めて読み返して。を繰り返すことが多いが、
本作は読み返しが不要なほどに出来事の結びつきが強く読みやすい。
時間軸も回想の順番が幼少期→小学生→…→現在に進むのも、読みやすさの一つ。
ただ、読みやすいが故に、話の展開も推測しやすく、ミステリーとしての難易度は低めな印象。
といったところで読みやすさは星4つ。
また、本作品は共感しやすく、感情も揺さぶられやすい。
主人公の双子が、善行をするときの原動力が「実体験に基づく怒り」であることもその要因のひとつだろう。
ただただ「正義の味方」というだけでないあたりリアリティがある。
主人公に対して感情が入りやすく、社会的環境も”目をそむけたくなるが確かに存在する現実”というあたり、感情を揺さぶってくる。
親子で読んで感想を言い合うにはちょうどいいと思う。
ということでエモさは星4つ。
また、この物語には、現実はそんなに甘くない。という描写が随所に散りばめられている。
幼少期の無力感。
どうしようも無いことはわかっていても拭えない罪悪感。
単なるハッピーエンドでは終わらない結末。
現実離れしすぎないがゆえに、誰もが望む幸せな終わり方にはならず、後味はスッキリとはしないかもしれない。
ということで後味は星3つ。
全体的な印象としては、
ライトユーザや親子に向けてはおすすめ。
伊坂幸太郎ファンは当然ながら必読。
ミステリー超大好きな人には少し物足りないかなという感じ。
読み始めたとき、「重力ピエロ」がふわっと思い浮かびました。
あちらも兄弟ものですがテイストが違うので、こちらも併せて読まれると面白いかもしれません。
↓もぜひ